痛みに関しての質問は多くの方に聞かれる質問の一つです。
ここでは鍼治療に伴う「痛み」と「刺激の感覚」について少し説明いたします。
当院では直径が0.14~0.25mmの鍼を主に使います。その鍼先は注射針の様に鋭利ではなく、特殊な加工がされて丸みを帯びた形をしているため、身体に入っていく際の皮膚組織へのダメージが少ないです。
そのお陰で、注射の時のような痛みはありませんし、出血もほとんどありません。
初めて鍼治療を受けたほとんどの方が、痛くない。または、思っていたよりも平気だと言われます。
そして、鍼が皮膚を通り抜けると痛みを出している凝り固まった筋肉などに直接アプローチしていきます。その固まった筋肉に鍼を当てるとズーンと重だるさを感じます。
この重たい感覚が「ひびき(響き)」と言われる鍼治療特有の感覚です。この「ひびき」は「痛み」とは異なり、マッサージの時に気になるところを押された感覚に近いものです。
ところが、健康なところに鍼をしても「ひびき」を感じる事はなく、鍼を刺されている感じもしません。
ひどいコリがある場合は押したり、叩いたりしたら気持ちがよいのと同じで、この「ひびき」の心地よさを求めて来院される方もいらっしゃいます。
当院では筋肉など、からだの動きに関わる組織へ治療することが多いので、ここでは筋肉に鍼をした際のメカニズムを説明いたします。
筋肉は負担がかかると緊張し、緊張が続くと硬く縮みます。そうすると、そこを通っている血管や神経を圧迫して締め付けてしまい、筋肉が窒息して固まっています。
その患部に鍼で刺激を与えると筋肉がゆるみ、締め付けられていた血管の血流がスムーズになり溜まっていた痛みを伝える物質や老廃物を洗い流し、栄養と酸素が供給されるようになり組織が回復し、神経の締め付けもなくなり痛みが消えます。
また、強いコリがある筋肉はいくら一生懸命にストレッチや運動で伸ばしても筋肉が元の長さに戻りにくいです。例えるなら、こんがらがってしまった糸がダマになってしまって、それを両端から引っ張っているようなものです。この「ダマ」に直接アプローチしなければ強いコリは取り除くことができないと考えています。
鍼治療は直接アプローチすることができるので強いコリや深いコリにとても有効な手段です。
鍼灸治療は、日本・中国・韓国などのアジア諸国はもちろんの事、欧米でも受け入れられています。
その理由の一つとして、NHI(米国国立衛生研究所)が病気に対する鍼灸療法の効果と科学的根拠、西洋医学の代替療法としての有効性を発表していることがあげられます。
また、WHO(世界保健機構)が鍼灸治療の有効性を認めた疾患は次のものを挙げています。
分類 | 疾患名 |
---|---|
運動器系疾患 | 関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫) |
神経系疾患 | 神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー |
循環器系疾患 | 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ |
呼吸器疾患 | 気管支炎・喘息・風邪および予防 |
消化器系疾患 | 胃腸病(胃炎・消化不良・胃下垂・胃酸過多・下痢・便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾 |
代謝内分泌系疾患 | バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血 |
生殖、泌尿器系疾患 | 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎 |
婦人科疾患 | 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊 |
耳鼻咽喉科疾患 | 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・蓄膿(ちくのう)・咽喉頭炎・扁桃炎(へんとう炎) |
眼科疾患 | 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい |
小児科疾患 | 小児神経症(夜泣き・かんむし・夜驚・消化不良・偏食・食欲不振・不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善 |
この中でも当院では運動器系疾患を中心とした、痛みの治療に特化しています。
そして、筋肉の強いコリが原因となって起こる症状は腰痛や肩こりだけではなく、頭痛、めまい、不眠、胃腸障害、血圧異常、自律神経失調症、不定愁訴(原因不明の身体の不調)などがあります。
強いコリ自体が病気になることはありませんが、病気の引き金になることが少なくありません。
無症状の人に椎間板ヘルニアの検査をすると約8割の人にヘルニアを含めた椎間板の異常が見つかった、という研究報告があります。
つまり、ヘルニアになっていても必ずしも痛みやしびれが出るとは限らないということです。
また、ヘルニアと診断された方でもヘルニア以外の原因により痛みが出ていることが珍しくありません。
鍼治療で痛みが改善する事例の多くは、筋肉の強い緊張が主な原因です。
よって、当院ではヘルニアの方でも痛みの原因が筋肉などの場合は鍼治療の適応症状だと考えています。
もちろん状態によっては手術などが最優先の場合がありますので、きちんとした判断が必要です。
ヘルニア以外の症状であっても、きちんと原因を見つけることで、鍼治療により改善できることがあります。
気になる方はお気軽にご相談連絡下さい。
病院で処方された薬や漢方薬と併用していただいて問題ありません。
また、病院での治療やリハビリ、その他の治療と併用していただいても問題ありません。
状態によっては、併用していただいた方がより効果的な場合もあります。
人は傷を負ってもその傷を自然に治すことができる「自然治癒力」を誰もが持っています。鍼灸治療は身体に物理的な刺激を与えることで引き起こされる有効な反応を利用して、この「自然治癒力」を最大限発揮させます。
そして、鍼灸治療の最大の特徴の一つは治療行為でありながら「薬を使わない」ということです。そのため、副作用がありません。
つまり、薬などによる強制的な治療ではなく、人間自身の力による体にやさしい治療です。
「はり師」「きゅう師」、それぞれの国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許を与えられている者です。
なお、国家試験受験には、文部科学大臣または厚生労働大臣認定の養成施設で3年以上規定の授業科目を終えなければなりません。
また、民間療法とは異なり、資格取得、治療院開設には、所轄の保健所に届出など行い、国の定める法律に則っています。